ナツの夏
5 太陽のように
石井ちゃん先生は、出産した翌々日に、赤ちゃんを亡くしていた。
先生自身も危険な状態になったらしい。
私はその4日後に生まれた。
先生と私のお母さんは病室で出会い、私もそこで先生と出会った。
そしてお母さんは、先生が胸にしまおうとしていた名前を、私へと繋いでくれたんだ。
皐月はその時、小さな私の手を握ったという。
なっちゃん、と呼び掛けたという。
そんなに幸せな記憶を覚えていないことが、すごく悔しい。