ブルースカイ
翼を愛してしまったこと―



翼を傷つけてしまったこと―




その記憶が私の脳を支配していた。






「美緒・・私は母親失格だってわかってる・・でも、あの時はあなたを失いたくなかったの。これ以上誰も失いたくなかったのよ。」




ママが感情的になっていくのを、


横にいる男の人がなだめる。



「・・・」



少し落ち着いたママが言った。



「あなたは信じないかもしれないけれど、私は、世界中の誰よりあなたのパパを愛していた――。彼が死んでしまった後もずっと。。。そして、あなたの事も同じくらい愛してたのよ。」




「うそ・・」




鋭い視線をママに投げつける。




「愛し方が分からなかっただけなの・・」



「・・・!?私より、男を愛してたくせに。」




私が武田に抱かれている所に居合わせたママに


蹴られた腹の痛さを思い出した・・




「パパを失った悲しみを忘れたくて、男の人とは色々つきあったわ・・結局みんな、ダメだったけれどね。」




ママは話を続ける。。




「あなたに、武田さんの事は、本当に申し訳なかったと思っているの。あの人、前は、会社を経営していて、結婚したら、少しは生活が楽になると思ったのよ。。でも結局、倒産して。。。それから、私に、お金をせがむようになったわ。。」




気のせいか話している間、


ママは時々おびえるような目をした。




「でもやっと・・見つかったのよ。パパを忘れさせてくれるような人が。」




ママは横に座る男の人をチラッと見る。




「彼、普通のサラリーマンなんだけどね・・私を愛してくれてるの。私、今、お店も辞めて、真面目に専業主婦してるのよ。笑っちゃうわよね。でも幸せなの。」




恥ずかしそうに笑うママを見て、


微笑む、中井さん。
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