zinma Ⅲ
プラチナ色の日に当たると白く輝く柔らかそうな髪を、黒いリボンで軽くひとつにまとめている。
楽そうな袖の広がった貴族風の白いシャツを着ていて、手首のあたりで絞られたその袖からは細く長い指が見えていた。
ズボンは先の青年と同じようなぴったりとしたものをはいていて、足元は少し装飾のついたブーツ。
胸元にはシャツと同じような白のリボンが着いていて、全身から貴族らしい高貴な雰囲気が放たれていた。
彼らが出てきた途端、路地を行き交う多くの人が彼らに視線を向けた。
美しすぎる、青年。
黒髪の青年の切れ長の金色の瞳は、年齢にそぐわない冷静さと、温かみがかいま見えた。
それに対し、金髪の青年の瞳は黄緑とも水色ともとれる不思議な色合いをしていて、それは深い色をしていた。
彼らは周りから向けられる視線をまるで気づかないように、店の前で一言二言会話をすると、共に街道をゆったりと歩いて行った。
2人はなんの目的もなく、ぶらぶらとシャムルを見てまわった。
服を着替えた途端、レイシアから放たれた貴族然とした雰囲気に、シギは感動していた。
立ち居振る舞いや、その穏やかな雰囲気。
見た目が美しいこともさらに引き立てられて、とてもただの旅人には見えない。
聞いてみると、マナーとかもシギの両親から教え込まれていたからだとか。
それにしても、異常だ。
いくつかの公園をまわって、2人はある公園のベンチに座った。
大きな噴水があり、ベンチのある周りにはたくさんの花が植えられた花畑があって、遠くに一際大きな水道も見える。
それにシギが感動している間、レイシアはただただ黙っていた。
その様子が着になって、ついにシギはレイシアに聞いた。
「師匠。」
「なんです?」
「師匠はキニエラ族を憎んでいるんですか?」
穏やかな風がふき、花々が一斉に首を揺らして甘い香りを2人に届ける。
レイシアはシギのほうを向いて、穏やかに微笑んだ。
「……憎む?なぜです?」
「いえ……なんとなくそう思ったので…」
穏やかな、いつもと同じ少し高めの声でレイシアは言うので、シギは首を横に振った。
それにレイシアはふっと笑うと、ベンチから立ち上がって、近くに植えられた空色の花を一輪摘んだ。
レイシアは花を見つめたまま、小さく息を吐いて静かに話しはじめる。
「……王家にはいろいろ貸しがあります。」
シギは言葉を発することなく、静かにレイシアの声に耳を傾けた。