zinma Ⅲ
「ボーム兄弟の生産していたブルムワインですね。
あんなワイン、店に出すもんじゃありませんよ。」
それに主人はしばらく黙り込んでから、声を上げて大笑いをはじめた。
「はっはっは!
かなわねぇな〜。わかった、気に入ったよ。
あんたなら城にもうまく忍び込めるのかもしれねぇな。」
「はは、ありがとうございます。」
「大サービスしてやる。
闇市の中でも特に良いものをそろえてる武器商には俺から話を通しといてやるよ。
馬鹿みたいに高いやつも安くしてくれるだろうぜ。」
「ありがとうございます。ぜひ。」
「ああ、だがその変わり、ことがうまくいったら俺にもなんか土産持ってこいよ?トラガー石以外出な。」
「あはは、わかりました。
王妃の指輪のローゼンブルーなんかどうです?」
「気に入った!それで頼むよ。」
レイシアはまた豪快に笑う主人ににこにこと微笑んで、左手をこっそりとテーブルの下にいれ、指を鳴らした。
魔術がつながったのを確認し、グラスのワインに口をつけるふりをして小さく口を動かす。
これからが、おもしろいところだ。
聖騎軍を騙し、警戒網をくぐりぬけ、王家を出し抜いて、必ずや情報を手に入れてやる。
いくつかの案を頭に思い浮かべながら、レイシアは小さく笑った。