zinma Ⅲ



その場にいただれもが言葉を失い、レイシアを驚きと感動の目で見つめている。




「そこ、どいていただけませんか?」


とレイシアが大男に向かって、言う。



すると、



「なめんじゃねぇ!!!!!!」




という怒号とともに、また大男がカウンターを殴り、破壊する。


それにレイシアはまったく同じることなく、ただ飛び散る木のかけらからナムを守るように、レイシアの影にナムを引き寄せる。

そのころには少しずつ落ち着いてきていたナムは、一瞬どきっとする。


すると、その埃やカウンターのかけらが舞う騒ぎの中で、だれかがレイシアに引き寄せられたナムをぐいっと引っ張る。


それにまたナムがびくりと身体を震わせるが、


「安心して。私から離れないように。」


と、聞いたことのある声が囁く。


顔を上げると、ナムの肩を抱くように引っ張ったのは、シギだった。

いつの間にか近づいて来ていたシギが、一瞬でナムをレイシアたちから遠ざける。


それがわかっていたらしく、レイシアは横目でシギを見てまたすぐ目の前の大男に視線を戻す。




埃がだいぶおさまったところで、


「まったく。これ補償するつもりあるんですか?」


と、まったく緊張感のない声で言うので、ついに大男が声を上げながらレイシアに殴りかかる。

それに客の多くがやっと悲鳴を上げながら、わらわらと酒場から逃げ去っていく。

シギはその人混みにさらされないようナムの腰を片手で抱き、飛ぶ。

一気に少し高めの天井まで飛び上がり、梁をナムを抱いていないほうの手で掴む。

ナムを梁の上に乗せ、自分も梁に登り、下を見てレイシアの様子を伺う。

ナムもすぐにレイシアたちを見た。




「おおお!」

声とともに大男がレイシアに拳を突き出す。

拳はさっきの男よりもずっと早い。


しかしレイシアは軽く流すようにそれを避け、後ろから殴ろうとしていた他の男に向かって、大男の拳の軌道を変える。




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