zinma Ⅲ
「しかしディルの煎れる紅茶は相変わらず上手いな。」
そう大佐が言うと、ディルはかすかに顔を赤らめてそっぽを向く。
「褒められても何も出ません。
その前にちゃんと休んでください。」
それに大佐は小さく笑い、
「ああ、そうするよ。
だがお前もあまり休んでないだろ。」
と言う。
それにディルは簡易キッチンに戻りコンロを掃除しながら答える。
「大佐ほどではありません。
私は大佐の秘書ですから、大佐が忙しくすれば私も忙しくなるんですよ。」
少し意地の悪そうに言うので、大佐は、
「悪かった。悪かったよ。
ちゃんと休むからそう怒るな。」
と笑いながら言う。
ディルもそれに笑いながら、
「はは、冗談です。
休んでくださればそれでいいです。」
と言う。
それに大佐は一度伸びをして、
「ああ…さすがに本当にもう休むか。
ディル。
もう後はいいからお前も休め。」
と言って立ち上がる。
それにディルは少し顔をしかめて振り向き、
「そんなこと言ってまた大佐は…」
と言うのでそれを遮り、
「ああ、今日はちゃんと休むから安心しろよ。」
と大佐が言うと、ディルはしばらく言い聞かせるようにじっと大佐を見てから、掃除していたコンロを置く。
「では、お言葉に甘えて……
明日は城へ行くんですよね?」
「ああ。」
「それならば少し早く来させていただきます。」
「そうだな、頼むよ。」
「はい。それでは。」
ディルがそう言って部屋を出ていく。
それを確認してから大佐は一度机の上の書類を手に取るが、さっきのディルの顔を思い出して苦笑すると、書類を机にまた置く。
「……今日はおとなしく休むか…」
そうつぶやいた瞬間に襲ってきた予想外の眠気に顔をしかめながら、
「…顔だけ洗って来よう。」
と言い、大佐は部屋を後にした。