zinma Ⅲ
レイシアの魔術によって、2人は一気に最上階へと飛んだ。
まだ明かりの付いたその部屋に警戒しながらふわりと窓枠に降り立つ。
シギは一度レイシアに礼を言って額の汗をぬぐいながら部屋を見回した。
壁を上ってくる間に見た他の部屋とは明らかに違う作り。
壁紙も張られ、床には深紅のカーペット。
部屋は丁寧に掃除が行き届いていて、ほこりひとつ落ちていない。
その部屋を見た途端また強く頭痛が襲ってくるが、シギは顔をしかめ頭を押さえ、
「……師匠、この部屋は……?」
と聞く。
レイシアは音もなく部屋に入ると、シギに答える前に人差し指を口に当てて合図をする。
それにシギはうなずき、空間に指を踊らせて魔法陣を描がいていく。
瞬く間に魔法陣はできあがり、強く輝く。
魔法陣が発動し、シギは空気の振動を操って声をレイシアにだけ聞こえるようにする。
『それで、師匠。この部屋に情報があるんですか?』
まわりには口だけ動いているように見えるのだが、レイシアにだけはシギの声が聞こえる。
それにいつの間に魔術を発動したのか、レイシアも、
『ええ、おそらく。
ここが王都軍の第二指令室です。
本部は王城の中にあるのですが…
現地の情報に関してはここが一番集めやすいはずです。
とにかく探しましょう。』
と、シギにだけ聞こえる声で答える。
それにシギはひとつうなずいて、同じように音をたてず部屋に入ると、情報を探しはじめた。
しばらく情報を探していると。
『これは………』
『師匠、何かありましたか?』
シギがしゃがみ込んで本棚を探っていた体勢から振り向くと、レイシアは向かいの本棚からある書類の束のようなものを取り出していた。
シギが立ち上がってレイシアに近寄って行くと、レイシアは険しい顔でぺらぺらと紙をめくっていく。