zinma Ⅲ
シギもその書類を覗き込むと、どうやら何かの報告書のようなものらしく、一言二言のメモがいくつも書かれていた。
『どうやら南に関する報告書のようですね。』
そう言ってレイシアはまたぺらぺらとめくり、あるページで手を止める。
そしてその前後のページを見比べるように行ったり来たりして、
『………ゴルディア族が優勢に立ったのは本当のようですね。』
とつぶやく。
それにシギがレイシアを見つめると、レイシアがある一点を指差す。
『この出兵記録の数字……
この日付より前の数よりも数倍に兵の数を増やしています。
明らかに戦況が変わったようですね。
ですが……』
そこでレイシアが言葉を止めたのをシギが受け継ぐ。
『…このころのゴルディア族に何があったかは書かれてませんね。』
それにレイシアもうなずく。
『ええ。このページの記録だけやけに曖昧というか、記録が少ないというか……
しかし、これを見てください。』
と、次にレイシアが指を指した場所には、複雑な紋様の印が押してある。
『これは?』
シギがそう聞くと、レイシアはポケットから手の平大の少し大きめのボタンを取り出す。
そこには書類と同じ印が描かれていて。
『これは王家の紋様です。
このページにだけ王家の紋様が押されているのは少々おかしい。
おそらくこの件に関してはこの第二指令室の人間ではなく、王城にある本部の兵たち、もしくは王家が直々に処理したのでしょう。』
それからレイシアは口の端を上げ、笑う。
『ふふ。
怪しさ満載ですねぇ。
ゴルディア族になんらかの奇怪が起こったのは間違いないようです。』
そして書類を元の本棚に戻すレイシアに、シギがなんとなく聞く。
『師匠はなぜそのボタンを持っているんです?』
それにレイシアは一瞬動きを止め、振り返る。