zinma Ⅲ
それに目の前の青年が少し視線をこちらから外す。
だが、それが命取りだ。
一瞬で剣を引く。
すると青年が少し驚いた顔でこちらを見るが、もう遅い。
剣を振り下ろす。
これで……………
「……ダグラス…………」
確かに聞こえた声に、つい動きを止めてしまう。
驚きを隠せずに声の主へ目を向ける。
「な…………………」
そこには、いるはずのない人が立っていた。
そんなはずないのに。
もうこの世界にはいないはずなのに。
もう、死んだはずなのに。
彼女は……………
「…………か……カリア…………?」
その瞬間に目の前の青年が動く。
気がついたときには剣を足で弾かれ、足を払われていた。
「ぐっ……」
床に倒れこむのと、青年が『あの人』を抱えて窓から出て行くのはほぼ同時だった。
ずいぶん世界がゆっくりに見える。
あのなつかしい紺色の長髪が、さらりと窓の外に消えた。