zinma Ⅲ






ひどい、頭痛。


頭が割れそう、というのはまさかにこんな感じだ。



頭の中にある何かが、必死で外へ出ようとしているかのような感覚。

脳が早鐘のように強く脈打ち、内側から頭を殴る。




思わず膝をついてしゃがみ込んだところで、遠のく感覚の向こうで部屋のドアがゆっくりと開かれるのがわかった。


だが、身体がまったく言うことを聞いてくれない。



ドアから入ってきた誰かが、素晴らしい身のこなしで一瞬にして背後に迫ってきた。

何かが風を切る音が聞こえる。


しかしそれはシギまでは届かない。



金属がぶつかる音とともに、ふわりと風が吹く。


頭を押さえ肩越しに後ろを見ると、どうやらレイシアが敵の攻撃を受け止めてくれたようだ。



本来ならここで逃げなければならない。









だが、レイシアの向こう。


剣を振り下ろしている男を見て、目を見開く。



また頭が脈打つ。






「………ぐ……ぁ………」



頭が吹き飛びそうになる。





30代の男。



鍛え上げられた長身を、位の高いことがわかる軍服に身を包んでいる。

キニエラ族らしい、金髪の髪。






レイシアと男が何か話しているようだが、まったく耳に入ってこない。


感覚がどんどん鈍くなり、真っ白に塗り潰されていくようだ。

痛みも、消えていく。








遠のく意識の中で、なぜか頭だけは冴え渡っていった。














母さんだ。


あれは、母さんと……………










ーーー………ス……。


ーーー……ダ………ス……。


ーーー……ダグラス。


ーーーダグラス。






それに、金髪の若者が振り向く。




母さんに駆け寄る。







ーーーダグラス。お前は、きっと良い兵士になる。




青年が嬉しそうに笑う。


その顔があまりに幸せそうで。








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