zinma Ⅲ
そのシギの瞳を真っすぐにレイシアも見つめ、しばらく沈黙が続く。
しばらくしてレイシアが大袈裟にため息をついてベッドに倒れこむ。
「はー、まったくあなたは頑固者ですねぇ。
カリアに瓜二つです。
気になるのなら、手を貸しましょう。
というより、おそらくあちらからやって来てくれるでしょうが……」
それにシギが怪訝な顔をする。
そこで口を開こうとしたシギを、レイシアが遮る。
「とにかく、私は今夜王城にある本部へ乗り込みます。
どうしても気になることがありまして……」
そう言って部屋の隅にある椅子に向かって手を掲げる。
『リィラ』
小さくレイシアがつぶやいて、掲げた手をひょいと持ち上げると、それに従うようにして椅子の上に置いてあった紙の束が浮き上がり、レイシアの手元へ跳んで来る。
レイシアがそれを掴んだのを見て、
「それは……昨日盗んできた書類ですか?」
とシギが聞く。
するとレイシアがベッドに寝転がったまま首だけシギへと向けてわざとらしく怒った顔をする。
「おや、失礼ですね。
盗んだのではありませんよ。
突然剣で切り掛かってきた人がいたので、ちょっとお借りしたんです。」
それにシギはため息混じりに、
「はいはい、わかりましたから。
で、何が書いてあるんです?」
と聞く。
するとレイシアは口元を書類で隠すようにして目を閉じ、んー、と声を出す。
それにシギが不思議な顔をしていると、レイシアが目を開いてシギを見て微笑む。
「秘密です。」
「……は?」
思わぬ言葉にシギが思わず聞き返す。
「ですから、秘密です。」
「秘密?」
少し顔をしかめるシギにレイシアが笑う。
「冗談ですよ。
これには西の情報がまとめられていました。」
そう言ってレイシアが寝転がったまま書類の束をシギに渡す。