zinma Ⅲ



ディルは良く働いてくれる。


王城への謁見を取やめにするのは大変な無礼であるのだが、ディルが朝から手を回してなんとかしてくれた。


『休みがほしい。』

そうディガロが言うと、はじめは昨晩怪我でもしたのかと心配したのだが、ただ休みがほしいだけだと言ったらとても喜んでいた。


ディルに心から感謝しながら、ディガロは街を歩いていた。



というより、探しているのだ。



彼女を。











昨晩見たあの姿。


どう見てもカリアだった。



紺色の艶やかな長髪。

切れ長の瞳。




そして確かに呼んだのだ。


『ダグラス。』

と。





まるであの日に戻ったようだった。


あの日。

最後にカリアに会った日。












『ダグラス。』



『………!カリア!』

『ああ、久しぶりだな。』

『カリア、無事でよかったです。』

『当たり前だ。私だからな。』

『はは、そうですね。』

『ダグラス、無理に笑うな。』

『え?』

『仲間が死んだと聞いた。』

『…………。』

『ダグラス。』

『…………。』

『ダグラス。』

『………はい?』

『お前は、きっと良い兵士になる。』

『え?』

『良い兵士になる。絶対。』

『え、なんですか突然……』

『私が保証する。』

『……カリアの保証つきなら、なれそうですね。』

『ああ。だから、良い兵士になって、生きろ。』

『…………え……?』

『死ぬな。強くなれ。』

『……え、カリア、何を………』

『死ぬな。』

『…………。』

『泣くんじゃない。』

『………泣いてません。』

『ふふ、お前らしいな。』

『………カリア…………』

『約束しろよ。死ぬな。』

『……はい。』

『ダグラス。』

『………。』

『私はお前を忘れない。』

『………。』

『泣きすぎだ、ばか。』


『……すみません………』



『はは。』







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