zinma Ⅲ
王都の人混みを歩きながら、視界が歪んで行くのを感じる。
いまに瞳から涙がこぼれそうになるが、まわりにわからないようにぬぐう。
とにかく今は、彼女を探す。
彼女は死んだはずなのだ。
あのあと別の任務を与えられて戻って来たときには、もうすでに彼女は軍にいなかった。
彼女の記録すらなかった。
まるで、初めから存在がなかったかのように。
しかし昨日の出来事が夢だったとも思えない。
死んだはずだとはわかっていても、昨日の彼女が幻覚だとはどうしても思えないのだ。
だがらディガロは探した。
異常に広い王都を歩きまわった。
街道を隅から隅まで歩き、路地裏もくまなく探した。
公園をいくつもまわり、休むことなく通り過ぎた。
疲れなんかはまったく感じなかった。
時間を忘れて、あの面影をただただ追った。
早朝から歩きはじめて、数時間。
もう昼過ぎになっていた。
朝よりも何倍も増えた人混みの中で、もう体力に限界がきているのをやっと感じた。
そういえば、昨晩も結局あの事件のおかげで一睡もしていない。
朝食もパンを一欠けらつまんだだけだった。
途方にも暮れていた。
もう見つけられないかもしれない。
昨日のは幻だったのかもしれないとも思った。
ディガロは適当な屋台でパンとチーズを買うと、近くにあった公園へと足を運んだ。
思えばここのところ働き詰めで、こうして思いっきり休みをとったのはもう数ヶ月ぶりだった。
シャムルをまわるのも、もうずいぶん久しい。
漂う花の香に少しずつ強張った身体がゆるみ、流れる小川のせせらぎが心を洗い流してくれるようだった。
もうこのまま、今日はゆっくりと休むのもいいかもしれない。
ゆったりと公園の石畳の小道を歩く。
公園の中にある小さな丘のてっぺんにベンチがあることは知っていた。
あそこで昼を食べて、のんびりしよう。
しかし。