zinma Ⅲ
それにダグラスが膝をつく。
呆然とこちらを見たまま。
それにシギはなぜか複雑な気持ちだった。
やっと両親が王家に仕えていたときのことを知っている人に会えたというのに、心のどこかでひどく悲しみを感じている。
懐かしいような、切ないような。
身体のどこかにある、涙を瞳まで押し上げていくような感情。
その感覚に目を細める。
するとそこでダグラスがやっとシギから目を離し、少しうつむいて自嘲するように笑う。
「……はは、そうか、やっぱりカリアは死んでいたのか……
馬鹿だな…
心のどこかで、まだカリアは生きてると信じていたんだ……」
そして地面にうずくまって、小さく声をあげて泣きはじめる。
「……ぅ…あ……す…すまない。
こんな…………」
シギはそのダグラスをベンチへと連れていった。
ベンチに座っても、ダグラスは顔を手で覆って声をあげて泣いた。
シギはその隣に腰かけ、じっと待った。
真っ青に晴れた空は、ダグラスの泣き声とは裏腹に平和以外何も表していなかった。
「………君は、母上に会ったことはないのか?」
しばらくして、ずいぶん落ち着いてきたダグラスが小さく聞いた。
それにシギは少し黙って、
「…そうですね。
直接会ったことはありません。
ですがある程度の生き様は聞いています。
ルミナ族だったこと。
軍に捕虜にされたこと。
父さんと結ばれたこと。
そして……死んだこと。」
と答える。
それに隣のダグラスが顔をしかめるのが、横目でわかる。
「私を捕らえなくていいんですか?」
シギの突然の質問にダグラスが驚いたように顔を上げる。
シギはまっすぐにダグラスの澄んだ青い瞳を見つめ返す。
「あなたもわかっているでしょうが、私はルミナ族の血をひいています。
私が最後の生き残りです。
軍としては、ルミナ族を滅ぼしたいのでは?」
それにダグラスが自嘲気味に笑う。
「はは、そんなの私には関係ない。
少なくとも今は休暇中だ。」