zinma Ⅲ
そのままの体勢でレイシアは首だけ振り向き、シギを見つめる。
「あとどのくらいですか?」
それにシギはやれやれと言った様子でため息をつくと、
「まだまだです。早すぎます。」
と言う。
それにレイシアは笑い、
「そうですか。じゃあもう少し逃げ回ればよかったですね。」
と言い、大男に押し付けていたナイフを離すとすばやくナイフの柄の部分で首を殴り、大男は気絶する。
その会話がわからなくて、ナムがシギを見ると、
「そのうちわかります。
さて。じゃあ気絶している間に奴らを縛り上げなければ。」
と言って、ナムに自分に掴まるように促す。
素直にナムが従うと、シギが梁からふわりと飛び降り、床に着地する。
ほとんど逃げ切っていない客たちが、予想以上にあっさり終わってしまった戦闘に呆然としているが、やがてレイシアたちに近寄る勇気もないので、大人しく酒場を出て行った。
レイシアはひとまず、残ったカウンターの影で腰を抜かしていた酒場の主人とナムを壊れていない椅子に座らせる。
そして、
「ちゃんと持って来ました?」
とシギに聞くとシギはうなずき、腰のベルトと腰の隙間に挟んであった、縛ってまとめた何本かのロープを取り出し、レイシアに渡す。
そしてレイシアはそれを受け取ると、
「ああ、ちょうどいいですから、これを機にあなたもロープの使い方を覚えましょうか。」
と言って、シギもそれに、はい、と返事をし、2人で男たちを縛り上げていく。
男たちを縛り終わると、シギは少しずつ落ち着いてきた酒場の主人を2階の宿になった部屋へ連れて行き、介抱しに行った。
レイシアは同じようにナムを空いた部屋へ連れて行きベッドに座らせると、コップに注いだ水を渡す。
レイシアも椅子を持ってきて座ると水を飲むナムを申し訳なさげに見つめ、
「……すみません。来るのが遅くなりまして。
怖かったでしょう?」
と言う。