zinma Ⅲ
シギが少しだけ目を見開いて、ダグラスを見つめる。
そのカリアにそっくりなシギの顔を見て、あの頃の2人をダグラスは思い出し、微笑む。
「いつも無表情なカリアが、ファギヌといるときはとても穏やかな顔をしていた。
ファギヌがいつもよりも重い怪我を負って帰ってきたときなんかすごくてね。
本人は気づいてなかったかもしれないけど、落ち着きなんかまったくなかった。
目に見えてうろたえていて。
ファギヌが治療棟から笑って出てきたときは、涙は流さなかったけど、真っ赤な目をして怒っていたよ。」
ダグラスは少し目頭が熱くなるのを感じながら、穏やかに微笑んだ。
…………
『カリア。』
『………っ!』
『ファギヌ!よかった!無事だったんですね!』
『ああ、ダグラス。心配かけたね。
傷は深くないんだけど、ちょっと打ち所が悪かったから検査を……って痛っ!!
カリア!何す………』
『この馬鹿!!なんであんな戦場で負傷するんだ!!』
『え、ちょ、カリア落ち着いて…』
『ダグラスは黙ってろ!
まったくお前はなぜそんなに……』
『いや、カリア、悪かったから、ほんと謝るから一回手を離し…』
『うるさい!特訓だ!鍛え直してやる!』
『えぇぇ?!いや、本当ごめ……』
『ああもううるさい!とにかくこれから……』
『カリア、目が赤いですよ!』
『なっ!ダグラス、お前……』
『うわっ、すごい殺気……ダグラス逃げなさい!』
『うわわ、カリア、すみません!』
『ははは……』
「はは。」
あのときのことを思い出して、ダグラスは思わず笑う。
それにシギが不思議な顔をするので、ダグラスはそれを手で制す。
「はは、は、いや、思い出し笑いだ。
君のご両親は本当に仲が良くてね。
あんな死にあふれた軍の中でも、彼らのおかげで私は癒されたんだ。」
それにシギがうれしそうにゆっくりと微笑む。
まるでカリアが喜んでくれているように思えて、思わずダグラスは顔を背けた。