zinma Ⅲ




「………だが、私は君が一番知りたいことを知らない。」


それにシギが少しだけ眉を寄せる。


「私は君のご両親が亡くなるまでの経緯を知らないんだ。」


ダグラスが悲しげに顔を歪めながらそう言うので、シギも同じく悲しくなる。


「……いえ、そんなこと……」



「しかし、知っているであろう人には覚えがある。」


シギの言葉を遮ったダグラスに言葉を失う。

驚いた顔でダグラスを見つめていると、ダグラスが優しげに微笑む。


「君のご両親が軍にいるころに親しくしていたのは私だけではなくてね。

もう一人。

もう一人だけ、懇意にしていた方がいるんだ。

いま彼は軍の職務から引退されて王都も離れられたんだが、今もご存命だ。」



それにシギの顔が一気に輝く。

その顔にダグラスも小さく笑い、言う。


「はは、喜んでもらえたようでよかった。

君に彼のことを教えてあげよう。

しかし、条件があってね。」



それにシギが一瞬にして真剣な顔になる。

その顔は、王都における自分の立場と、自分の存在の危うさとをすべて覚悟した顔だった。


ダグラスはベンチから立ち上がり、シギに向き合うようにして立つ。



「君のご両親に世話になったうえに、こんな情けない一兵士に成り下がった私が言うべきことではないんだが……

これだけは約束してくれ。

人の生死が関わるようなことに手を出さないでくれ。」


ダグラスのそのあまりにも真剣な顔に、シギも静かにその言葉を聞く。



「君がルミナ族の力を継いでいるかどうかはあえて聞かないが…

それは災いを呼ぶ力だ。

君のご両親も、それから逃れられなかった。

綺麗事を言うつもりはないが…
私だって人が死ぬのは嫌いだ。

特にその人が特別な存在なら、なおさらね。」


そう言ってダグラスは自分の懐から何かを取り出す。




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