zinma Ⅲ






『おや、ファギヌ。
何を読んでいるんだい?』




『『選ばれしヒト』について調べているんだよ。』




『はは、努力家だなあ。』




『ねぇ、父さん。
『選ばれしヒト』のギムってなんなの?』




『…………義務か?』




『うん。』




『そうだな………

まず彼が『呪い』を集めることを言い渡されているのは知ってるだろ?』




『うん。』




『そう、彼は『呪い』を集めてそれを自分の中に溜め込む。

それが彼が『呪い』を食べる力を得るために、神様と契約した『代償』だ。

ひとつ目の彼の義務。』




『うん。』




『そしてもうひとつ。

彼の最後の義務は、『呪い』を集めきって、『選ばれしヒト』の力と集めた『呪い』を差し出すことだ。』




『それだけ?』




『ああ、それだけ。

でも彼にとっては一番つらい義務なんだ。』




『どうして?』




『彼がその吸収した『呪い』の力を使うことを許される変わりに、彼が神様に払った代償があるんだ。』




『それはなに?』




『彼の命だ。』




『いのち……?』




『ああ、そうだ。

彼はもう『選ばれしヒト』として産まれた時点で、神様に人間としての彼の命を差し上げてる。

彼が生きていられるのは、彼が『選ばれしヒト』であるからなんだ。』




『それだと何か困るの?』




『……そうだね。

例えば彼がもし自分の吸収した『呪い』を使うとしたら、『呪い』と正反対の力を持った『選ばれしヒト』は傷ついてしまう。

『選ばれしヒト』は命を削られてしまうんだよ。』




『じゃあ力は使えないの?』




『そう。使っちゃいけない。

そしてその代償のおかげで、彼に何が起こるかわかるかい?』




『………。』




『彼には『選ばれしヒト』の力を返す義務がある。』




『でも『選ばれしヒト』が自分の中にいるから、その人は生きていられるんでしょう?』






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