zinma Ⅲ
『…………。』
『どうしたんだい?カリア。』
『ファギヌか……。』
『………レイのことかい?』
『……ああ……』
『…………あの子はどうやら……
感情を無くしたらしいね。』
『………』
『こんなことは初めてなんだろう?』
『……ああ。村から持ってきた文献を隅から隅まで読んだが、どこにも感情を失う記述なんかなかった。』
『……そうか。』
『レイはきっと………
きっといままでの『選ばれしヒト』とは違うんだ。
なぜかはわからない。
おそらくレイも、それには気づいていない。』
『そうだね。』
『なぜだ?なぜレイが……』
『わからない。
でもきっと、あの子は本当に、本当の意味で、神に選ばれた子なんだろうね。
産まれる前から選ばれて、産まれてきたんじゃないかな。』
『………そんなの……
何もうれしくない。』
『……ああ。
数奇な運命に産まれた……。
でも、もしかしたら彼こそ、彼こそこの世の『呪い』を断ち切ってくれる『選ばれしヒト』なのかもしれない。』
『…………予言どおりだな。
黄金の髪をなびかせ、海と空を望む瞳を持つ神童、現る。
此の白の天使、産まれ落とされしとき、此の世はかつての楽園となる。
神の子、世を清めて神へと捧げられる。』
『……あの子には予言のことは言わないほうが良いだろうね。
あの子がその運命をどう歩むかは、あの子に任せよう。』
『その方が良いな。
レイは………優しすぎるから。』
『…本当に天使みたいだね。』
『………ああ。
でもレイは危険だ。
『選ばれしヒト』に身を任せたからこそ、感情が消えたからこそ、『呪い』に喰われる可能性も高い。』
『うん。
もしもレイが彼の優しさから、だれかを恨むようなことがあれば………
すぐにでも喰われる。』
『………どうか、どうかレイがいつまでも優しさを忘れていてくれるように。』
『……………そうだね。』