zinma Ⅲ
目を覚めたときには、頭はひどくすっきりしていた。
頭痛もすっかり消えた。
長い夢を見つづけていたような、現実になかなか戻ることのできない感覚。
まだぼんやりとする意識の中あたりを見渡して、そこが宿の部屋の中だということがわかる。
隣のベッドはもう空になっていた。
部屋の中は薄暗く、窓へ目を向けると外はもう日が暮れたあとのほんのりと青く光る時間になっていた。
その景色をしばらく見つめ、頭が冴えていくのをゆっくると待つ。
「……『選ばれしヒト』の、義務……」
小さくそうつぶやいて、拳を握りしめる。
そこでなぜか胸がざわつくのを感じる。
それに顔をしかめ、思わず隣のベッドに目を向ける。
ベッドはやはり空だ。
当たり前だろう。
いまレイシアは王城に……………
「……っ!!」
シギはそこで勢いよく立ち上がる。
心臓がうるさく暴れる。
レイシアは今までの『選ばれしヒト』の中でも特別で。
しかしだからこそ危険なのだ。
もしもレイシアがだれかを恨むようなことがあれば、『呪い』がその恨みを糧として暴れる。
喰われる。
心臓の音をやけに近くに感じる。
『師匠、何か怒ってます?』
『それもあなたが『選ばれしヒト』のことを知ればわかります。』
気づいたときには、シギは部屋を出ていた。