zinma Ⅲ
「問題はないか?」
「はい、隊長。」
もう何度目かわからないやり取りを繰り返す。
王城の警備はこの世界で最も厳重だった。
何百もの兵士が、敷地内の隅から隅まで監視する。
王城の一階は、巨大なエントランスからはじまり、ダンスホールや客間などの来客用の巨大な部屋に占められている。
二階から四階にかけては、王家の人間がくつろぐ部屋も設けられているものの、主に執事室や軍の本部が配置され、働く人間の行き交う階になっている。
それより上は王家の住居となっていて、限られた人間しか入れない区画になっていた。
その王城の3階部分の外。
見張りの兵が立つ空中廊。
変わらず点呼を繰り返しながら、何人もの兵がいつもの同じ仕事をこなしていた。
しかし。
かすかに風の音を感じ、一人の兵が辺りを見回した。
風を切るような音。
甲高いその音は鳴り止むことなく、徐々に近づいているように感じる。
「どうした?」
「あの、隊長、この音…………」
「音?」
それに2人が耳をすませる。
「なんだ……?」
「近づいてます……っ。」
「落ち着け。
それよりこれは………」
そこで2人は空を見上げる。
「上から………?」
ダンッ!!!!!!!
風の音が近づいたかと思うと、突然大きな音をたてて2人の目の前に何かが落ちてきた。
突然の出来事に、二人とも身体を固める。
真っ黒の固まりは、人の形をしていた。
しゃがむようにして着地したそれは、真っ暗な黒装束を着ていて、うつむきフードを目深にかぶった顔はいまいちよく見えない。
「………な、な、何者だっ!!!!」
やっと声をあげると、風をまとったその人間が顔を上げる。
かすかに覗く唇が、笑う。
しかしその次の瞬間には、その場にいた兵士十数人は一人残らず、倒れふしていたのだった。