zinma Ⅲ



「それで?
なぜまたここへ来る気になったんだ?

朝届けるはずだった書類はそこのディル君がすでに届けてくれているんだがね。」



それに部屋の隅で待っているディルが軽く一礼する。


それを横目で見て、ダグラスは少し息を吸う。



「………本日は、お話があってここへ参りました。」



それにドープが嘲笑するようにして、姿勢を正す。


「そりゃあそうだろう。
用もなくこんなところまで来るはずがない。

さっさと言いなさい。」



そう言うドープに、ダグラスは一瞬目をふせて、またドープの黄緑の瞳を真っすぐに見つめる。





「……人狩り計画を……中止していただきたいんです。」




我ながら情けない声だ、ダグラスはそう思って笑いそうになる。




ドープはその言葉を聞いた途端、表情を消した。

テーブルの上で手を組み、険しい顔でダグラスをにらみつける。


その威圧感をもろともせず、ダグラスは続ける。



「私は長らくこの軍で王家に尽くしてきました。

人狩り計画にも参加しました。

しかしおかげで軍の存在理由を忘れてしまっていた。」



そこで言葉を切って、ダグラスはドープをにらむ。





「軍は人を守るものです。
殺すものじゃない。」






そこでドープがゆっくりと立ち上がる。


腰の後ろで軽く腕を握り、ゆっくりと歩く。



「なるほどな。
それを要請しに来たというわけか。」


そこでドープは窓際に立ち、腰の後ろで手を組んだまま外を眺める。




「ディル君。」


「……え?あ、はい!」

突然名前を呼ばれ、ディルは慌てて姿勢を正す。


ドープはこちらに背中を向けたまま言う。



「少し席を外してくれないか?
2人だけで話がしたいのでね。」


それにディルが少し戸惑うようにするので、ダグラスは振り返って微笑を浮かべる。


「かまわない。外に出ていろ。」


ディルはそのダグラスをしばらく見つめ、おとなしく一礼をして部屋を出た。




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