zinma Ⅲ
そう言ってドープは近くにあった本棚の中の本を軽く押す。
何かがはまるような、カチリという音がする。
応援の兵でも呼ぶつもりなのだろう。
「残念だよ。
本当に君は優秀な兵だった。」
ダグラスにゆっくりと近寄りながら、ドープは続ける。
「貴族の方々も、大変に君を気に入っていたというのに。」
世間話でもするような穏やかな口調。
「なぜ突然心変わりしたんだね?」
そこでドープがダグラスの目の前に立つ。
「あと少しすれば、君は、きっと良い兵に………」
「それ以上言うな!!!!」
突然ダグラスが声を荒げる。
ドープは動じないようにしてダグラスを冷たく見つめる。
「良い兵などと軽く言わないでいただきたい!!
あなたに……あなたに良い兵の何がわかると…………」
怒りに震える声音で言うダグラスに、ドープが嘲笑うようにして言う。
「良い兵か?はっ。
それは忠誠を誓える兵士のことだ。
反抗することを知らず、ただ尊い方々に遣えるだけの駒のことだよ。
それに当てはまらない駒は迷わず切り捨てる。
それが理想の組織というものだ。」
そこでドープがダグラスの制服に手を伸ばす。
胸の部分につけられた、王家の紋章を触る。
太陽の紋章。
「この太陽の紋を付けて良いのは選ばれた兵士だけだ。
君にはそれがわからなかったようだな。
かつてこの紋章を付けながら、その意味をわからなかった君のような輩が何人もいた。」
そしてドープはダグラスの制服からその紋章を引きちぎる。
「あの……ルミナ族のようにな。」
それにダグラスが目を見開く。
「ふん。
私が知らないとでも思ったか?
君は奴らと仲良くしていたのだろう?
それでも君はよく働いていたと思ったのに、まさかこんな形で裏切られるとはな。」
そこでダグラスは強く唇を噛む。
後ろのドアから何人もの兵士が部屋に入ってくるのがわかる。