zinma Ⅲ
夜の先の祠
情報屋が提供してくれた情報は、レイシアたちにとってとても重要なものだった。
レイシアたちは酒場に入り、まずたくさんの人に聞き込みをした。
自分たちは各地の伝説やお伽話、不思議な話を集めているもので、何かこの地のそういったものを知りませんか、と聞いてまわった。
すると全員が、口をそろえてあるお伽話を教えてくれた。
昔この地には、仙人が住んでいた。
その仙人は、どれだけ遠くから人が近づこうと、それに気づいて見せた。
広い範囲を見て、聞いて、感じることができた。
その仙人は死ぬ前に、自分のその力をある祠に納めた。
仙人が死んだあと、多くの人間がその祠を開けようと試みたが、だれも開けることができなかった。
ある者は祠に触れた瞬間、発狂した。
ある者は祠を見た途端、目がつぶれた。
それ以来祠に近寄る者はいなくなり、祠の存在は忘れられていった。
これはミルドナに伝わる都市伝説らしく、レイシアとシギが酒場で出会った者たちが全員知っているほど有名な一種のお伽話になっていた。
さらに聞き込みを続けていると、レイシアはある男に声をかけられた。
その男は情報を売買する手のもので、その都市伝説についての有力な情報を持っている、と言ってきた。
それにレイシアが乗り、聞いた話がこれだ。
祠は、発見された。
どうやら、何者かが祠を発見したらしい。
そいつがどうなったかはまだ俺たち情報屋にも流れてきていない。
それくらい新鮮な話だ。
それからレイシアはさらに金を払い、その祠が発見されたらしい場所を地図に示してもらった。
これでレイシアとシギの行き先が、決まった。
もしかしたらこの仙人が有していた力は、『呪い』かもしれない。
『呪い』を回収することが、レイシアの宿命だった。