zinma Ⅲ
ダグラスが心の底から身体が震えるのを感じながら、なんとか首を振る。
「……し、知らないんだ。
確かに私たちは、クトルへ人狩りをしに兵を送ったんだが……
なぜか連絡が取れなくなって……
様子を見に行かせたら、村の人間も軍の兵士も、みんな………」
そこまで言ってダグラスは口を閉じる。
レイシアはまるで試すかのようにダグラスの瞳をしばらく見つめ、黙り込む。
しばらくそうして、レイシアは静かに言う。
「………どうやら本当のようですね。
ですが、あなたたちがクトルを狩ろうとしていたのは事実。
そうでしょう?」
それにドープもダグラスも、ただただ震えるだけだった。
どんどん火の手が強くなる。
「クトルに兵を送って、どんな命令を下していたんです?」
レイシアがドープを見つめる。
それにドープが瞳を揺らすと、レイシアがわずかにナイフに力を込める。
「うぁあ………っ」
ドープの首から、血が流れる。
「言わなければ、次は確実に動脈を切ります。
私はカリアとファギヌの弟子だ。
彼らのこういった技術はわかっているでしょう?
私はそれを受け継いでる。」
するともうドープがさっきまでの貫禄はどこへ行ったのか、大量の汗を噴き出しながら言う。
「お…女子供を拉致するようにと……」
「その他の人間は?」
「…………皆殺しに……」
「…………。」
レイシアはうつむき、垂れたプラチナ色の髪で、顔が見えなくなる。
しかしナイフを握る手にわずかに力が入り、ドープの顔が恐怖に歪むのを見て、ダグラスは思わず動く。
「……や、やめ……」
しかし伸ばしたダグラスの手を、いつの間にか近づいてきていた石像が掴む。
レイシアが小さく言う。
「いい。
その男は少し遠ざけてもらえますか?」
すると石像は少しレイシアを見つめ、身体を軋ませながらゆっくりとダグラスを連れていく。