zinma Ⅲ
「そして私の………」
石を握りしめる。
「私の…………」
黒の目から。
黒い涙が…………
「私の夢を……………
彼女を奪い去った!!!!!!!」
途端レイシアから爆発的な殺気が噴き出す。
もう部屋を覆い尽くそうとしている炎の真っ赤な光りを浴びて、レイシアは戦いの神そのものだった。
『憎い』
レイシアの口が動くが、それはレイシアの声ではない。
『憎い憎いニクイニクイ。』
鼓膜を直接刺激するような、耳障りな低い声。
『オマエガ、ニクイ。』
そう言った途端、レイシアのプラチナ色の髪までもが黒に染まりはじめる。
黒い血管が、異常な速さで脈打つ。
ドープはその化け物を目の前にして、もう恐怖に涙を流している。
レイシアが突然ドープの頭を握っていた右手を空中へ向ける。
するとその手に静電気でできたようなボールが現れ、はじける。
その衝撃波によって、部屋の一部が一瞬でふっとぶ。
「な…………」
ダグラスが呆然としている間にも、レイシアはそのボールをいくつも放ち、部屋を破壊する。
しかしあるところで、
「………がぁ……っ!」
レイシアが口から血を吐き出す。
それにダグラスが思わず駆け寄ろうとすると、ダグラスの腕を石像が引っ張り、後ろへ飛ばす。
石像は鈍い動きでレイシアへと近寄り、レイシアの肩を触る。
その間にも放たれるボールによって、石像は破壊されていくが、なぜかレイシアのもとを離れようとしない。
それどころか、レイシアを中心として風が巻き起こる。
レイシアを包み込むようにしてぐるぐると周り続ける。
部屋を包んでいた炎がなぜか弱まり、そこからたくさんの火の粉が集まる。
それは石像のように女の形を作り出し、同じようにレイシアへと近寄る。
「………ぐ…ぁ………」
それに反応するようにして、レイシアの暴走が止まる。