zinma Ⅲ
しかし。
「師匠っ!!!!」
突然光が差し込んだようだった。
叫んで部屋に飛び込んで来たのは、あのカリアの息子だった。
彼は部屋の状況と彼の師匠と、そして最後にダグラスの方を見て、理知的な瞳で目の前の状況を素早く理解しているようだった。
そこで彼が突然瞳を閉じ、両腕を目の前に掲げる。
それにダグラスが怪訝な顔をしていると、すっと瞳を開く。
切れ長の瞳が輝いたような気がした。
彼は掲げた両腕を素早く空間に踊らせていく。
すると不思議なことが起きた。
きらきらと輝く模様ができ上がっていくのだ。
ダグラスはそれを見たことがあった。
カリアとファギヌが、使っていた。
『カリア。』
『うん?』
『本当にルミナ族は不思議な力が使えるんですか?』
『………ああ。』
『でもファギヌもカリアも、戦場では使わない。
私は見たことがありません。』
『…………ダグラス。
不思議な力というのは、そう簡単に使ってはいけない。』
『………。』
『この力は人を殺すためのものではない。』
『………じゃあ、何に使うんですか?』
『人を、幸せにするためだ。』
カリアにそっくりな青年が、出来上がった魔法陣の中心に掌をたたき付ける。
途端に爆発的な水が魔法陣の中心に現れ、部屋の中の火の手を次々と消していく。
その魔法陣が消える前に、彼はまたすごい速さで次の魔法陣を描きはじめる。
それはさっきのものとは少し違うようで、模様もより複雑で古いように見える。
規模も大きく、さっきよりもかなり時間がかかるようだった。
青年はそれに顔をしかめながら、必死で魔法陣を作っていく。
速く、速く。