zinma Ⅲ
するとまだ両目を黒く染めたレイシアが、ゆっくりと彼の方を向く。
片手が動き、ゆっくりと彼に狙いを定める。
またさっきの静電気のボールが、その手の先に出来上がっていく。
それにダグラスは目を見開く。
あれに当たったら、死んでしまう。
また、カリアを失ってしまう。
「………に、逃げろ!!!」
ダグラスは叫んだ。
同時にレイシアがボールを放とうとした。
しかし。
「精霊召喚!!!!!」
いつの間にか出来上がった魔法陣に青年が拳を叩き込む。
するとその巨大な魔法陣がその拳に絡み付くようにして張り付く。
その腕を青年は床に思いっきり殴りつける。
どくん。
レイシアの鼓動と同じほど大きな音が聞こえるのと同時に、さっきよりも拡大した魔法陣が床一面に現れた。
すると、
『ーーーーーー。』
甲高い女性の歌声のようなものが聞こえたかと思うと、目が潰されそうなほどの光が床から放たれる。
「ぐっ…………」
ダグラスが思わず腕で目を覆い、光から逃れる。
しかしその腕の隙間からわずかに見えた。
光輝く床から這い出すかのように、巨大な女が現れたのだ。
金色に輝く女。
ダグラスの5倍はありそうな巨大な身体が、床に肘をついてずるりと這い出す。
上半身だけを覗かせたままで、片手でレイシアをゆっくりと包み込む。
またそこで激しい輝きが部屋を包み込む。
「うゎ………っ!」
ダグラスは今度こそ目を閉じた。
ゆっくりと目を開くと、そこにはもう巨大な女も、石像も、炎の女神もいなかった。
部屋の真ん中で、レイシアが倒れていた。
髪はもとのプラチナ色に戻り、肌からも黒の血管は消えて色白の肌に戻っている。
瞳の色だけは、静かに閉じたまぶたに隠れてしまっていてわからないのだが。