zinma Ⅲ
ゆっくりと
「……………ん。」
シギはゆっくりと目を開けた。
やけに心地の良い光が差し込んでいる。
起き上がろうとするが予想外に身体が動かず、あきらめてまたベッドへと身体を沈めた。
首だけで周りを確認するとそこは古い部屋で、白いカーテンごしに射す光が部屋に穏やかな明かりをもたらしていた。
「ああ、やっと起きたね。」
聞き覚えのある声が聞こえ、シギはそちらへ顔を向ける。
すると部屋のドアが開いていて、そこにダグラスが立っていた。
いつもの軍服ではなく、一般の人間が着るような楽な服を来ていて、簡単な食事の載った盆を片手に持っていた。
「………聞きたいことがいろいろありすぎて、まとまらない…。」
寝起きのかすれた声でシギがそう言うと、ダグラスは穏やかに笑いながらドアを閉めてシギの隣のベッドへ近づく。
手近な椅子に盆を起き、自分はベッドへ腰を降ろすと、口を開く。
「まず、君はもう3日間眠り続けていたんだ。
身体が動かないのは、無理もない。
無理矢理動かすのはよくないよ。
まだ寝ているといい。」
「3日…………。」
シギは呆然とつぶやき、長いため息を吐きながら頭を押さえる。
「3日?寝すぎました……。
早く発たないといけないのに…。」
落ち込んだようにそう言うシギにまたダグラスは笑う。
「大丈夫みたいだよ。
ここはレイシアが信用してる情報屋の酒場らしくてね。
その情報屋がかくまってくれているんだ。」
それにシギは一気に頭が目覚める。
勢いよく上半身を起こし、ダグラスを見つめる。
「さ、酒場?
私はあの夜確かに私たちの宿に……
いや、それよりも師匠は………」
「まあ、落ち着きなさい。」
いつも無表情なシギの慌てる姿に感心しながら、ダグラスは片手でそれを制す。