zinma Ⅲ
そこでシギの魔法陣から放たれた金色の輝きがレイシアにたどり着く。
降り注ぐその光を味わうようにレイシアはしばらくたたずみ、そして元に戻った水色とも黄緑ともとれない瞳をダグラスたちへ向ける。
レイシアは水面を軽く蹴る。
すると、水面に静かに波紋だけを残して一足飛びでダグラスたちの目の前へ降りる。
ダグラスがそれに少し驚いたような目をするが、レイシアはそれを気にとめず、ダグラスにもたれかかったままのシギに近寄る。
しゃがんで顔を覗き込むようにし、
「…大丈夫ですか?」
とレイシアが静かに聞く。
シギはさっきよりもかなり回復した様子の顔色で、あやふやに微笑む。
「はい、まあ。
でも……疲れました。」
そう言ってシギは深く息を吐きながら、またダグラスの腕の中に身体を沈める。
レイシアがそれに薄く微笑む。
「……レイシア、身体は?」
ダグラスがそう聞くと、やっとレイシアはダグラスへ視線を移す。
そしていつものようににっこりと微笑み、答える。
「もちろん、元気ですよ。
彼が聖霊召喚をしてくれたおかげで、倦怠感もすぐ消えました。」
そして立ち上がり、脱いだブーツを履こうとする。
ダグラスはそれをしばらく眺めてから、また聞く。
「だが、命が削られたことに変わりはないだろう?」
レイシアはその言葉を背中に聞き、ブーツを履きながら答える。
「もちろん。
今回はそれなりの力のある『呪い』を使いましたから…
普通よりは少し多めに減りました。」
その口調はまるで世間話でもするかのような口調で。
レイシアのあまりにもなんでもない口調にダグラスは顔をしかめる。
しかしそんなダグラスを無視するかのようにレイシアは続ける。
「命が減ることなんかどうってことない。
私が気にするべきなのは、いかにその命の駆け引きを上手くやり終えるか、です。
『選ばれしヒト』の義務を達成するまでに、身体がもてば良いんですから。」