zinma Ⅲ




「ぷぁっ………げほっ!
師匠!!いい加減に………」


「いい加減にしてほしいのはこっちです。」



シギの言葉を遮ってレイシアはため息混じりに言う。



「まだ回復ないでしょう?

これからの私にとってあなたの魔力は重要な要素のひとつなんです。

無理されては困ります。」


それにシギが反省したように鼻から下を水に沈めて黙る。



ダグラスはその2人を交互に見つめ、口をはさむ。


「わからないんだが……
さっきまでシギには何が……」


そこまで言ったところで、レイシアが肩越しに振り向いて答える。



「ルミナ族の魔力も『呪い』のひとつなんですよ。

だから『選ばれしヒト』が現れれば、契約者である彼は苦しむわけです。」




それに湖で立ち泳ぎしたままのシギが声を上げる。



「それにしてもこの扱いはひどいですよ!

溺れるかと思いました……。」


レイシアはそれに声を上げて笑う。


「はは、いえ、その湖は特に力の強い『祈り場』ですからね。

水に触れているだけで魔力が満ちるでしょう。

さらに………」



そこでレイシアは言葉を止め、湖へと近づいていく。

そして水に手を入れ、何かを小さくつぶやいた。



すると。






立ち泳ぎするシギの目の前。



そこにわずかに波紋が現れる。

雫が落ちたほどの、小さな波紋。





水が揺れる音がしたかと思うと、ゆっくりと、波紋の中心から頭が現れる。



女だ。


長い髪を持った、美しい女。



だが人間ではない。



水でできた女だった。





シギに見つめ合った状態で首から上を現すと、ゆっくりと微笑を浮かべる。



さらにゆっくりと泳いで、シギの近くを回る。





「それは女神ですよ。

この湖の水を媒体として召喚しました。

この湖はもはや女神の身体同然。

すぐに回復するでしょう。」




シギはゆっくりとシギの周りを泳ぐ女神を見つめる。





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