zinma Ⅲ
風見鶏の街
「お、見えてきましたね。」
レイシアは目の上に手をそえてそう言った。
街道を歩くこと半日。
王都に一番近い西の街、ベルーシカは比較的簡単にたどり着くことができた。
ベルーシカまでの街道の途中、小高い丘を登りきったところに3人はいた。
目の前に広がる景色の先に、かわいらしい街並みが見えてきたのだ。
「ベルーシカ。
風見鶏の街だな。」
ダグラスも目を細めて街を見て、そうつぶやく。
それに、
「風見鶏?」
シギが不思議そうにダグラスを見る。
また3人は歩きはじめながら、ダグラスが話しはじめる。
「西の地方は、丘と風が有名なんだ。
北のような高い山脈がない代わりに、たくさんの丘陵地帯が続いている。
さらに風がよく吹く地方で、気温も高くもなく低くもないから、一番住み心地の良い地方としても知られているんだよ。」
そしてダグラスはポケットの中をあさりはじめる。
それをシギが見つめていると、ダグラスはポケットの中から何かを取り出した。
「それは…………」
シギが思わずそうつぶやく。
ダグラスの手には、小さな銅でできたお守りが握られていた。
鶏の紋様のようなものを象っているように見えた。
「これは前に西に遠征へ出たときにベルーシカで買ったものでね。
風見鶏のレプリカだ。
こういう風見鶏が、街のすべての屋根につけられている。」
シギはそれを受け取って、不思議そうにそれをながめる。
「西の地方はすべて風見鶏の伝統があるんだが、ベルーシカはとくに町並みもきれいだし、風見鶏も美しい。
だから風見鶏の街と呼ばれてる。」
するとそれまで無言で足を運んでいたレイシアが肩越しに振り向く。
「博識な同行者が増えてありがたいです。」
そう言って微笑むと、レイシアはコートのフードをかぶる。
街の門が近づいたのだった。