zinma Ⅲ
レイシアは続ける。
「それを知ってか知らずか、何者かがあの祠を封じた痕跡がありました。
それがこの山に漂う並々ならぬ狂気の正体なのですが……。
ですかそんなことをできるのは、同じく『呪い』だけ。
何か他の『呪い』を有した者があの祠を封じ、仙人の中の『呪い』の動きを封じたんです。」
一気にそこまで説明し、さらにすごい速さで走っているというのに、レイシアの息はまったく乱れない。
「ですが、あの祠は開いていた。
封印が解かれたんです。
仙人のミイラの中からも、『呪い』の気配はまったく消えていました。
おそらく、仙人を封印したであろう『呪い』の現在の契約者が『呪い』の声に従い、あの祠へやって来た。
仙人の中の『呪い』を吸収するつもりだったのでしょう。
しかし仙人の中の『呪い』が予想以上に強く、逆に封印を解いた『呪い』は吸収されてしまった。」
そこでシギはレイシアのほうを驚いたように見る。
そのシギにうなずき、レイシアは続ける。
「あそこには強くなった仙人の『呪い』の気配が残っていました。
おそらく『呪い』はいま契約者を探しに行っています。
ここから一番近い、人が集まる場所は……」
とレイシアが言ったところで、シギも気づく。
「……ミルドナ……」
レイシアがまた険しい顔に戻り、うなずく。
「そうです。
おそらくすぐにミルドナに契約者が現れます。
何百年も封印されていた『呪い』なら、暴走する可能性は極めて高い。
人が大勢死ぬ。」
それにシギも顔をしかめる。
緊急事態だ。
「その仙人の『呪い』と、それが吸収した『呪い』の能力はわかるんですか?」
シギがそう聞くと、レイシアはうなずく。
「お伽話を聞く限り、仙人の『呪い』の能力はおそらく『万感』でしょう。異常に広い範囲を感じることができる能力。
吸収したほうの能力は……
おそらく『拒絶』です。
近寄る者を、すべて傷つけ遠ざける一種の結界です。」