zinma Ⅲ



レイシアは続ける。


「それを知ってか知らずか、何者かがあの祠を封じた痕跡がありました。

それがこの山に漂う並々ならぬ狂気の正体なのですが……。

ですかそんなことをできるのは、同じく『呪い』だけ。

何か他の『呪い』を有した者があの祠を封じ、仙人の中の『呪い』の動きを封じたんです。」


一気にそこまで説明し、さらにすごい速さで走っているというのに、レイシアの息はまったく乱れない。


「ですが、あの祠は開いていた。

封印が解かれたんです。

仙人のミイラの中からも、『呪い』の気配はまったく消えていました。

おそらく、仙人を封印したであろう『呪い』の現在の契約者が『呪い』の声に従い、あの祠へやって来た。

仙人の中の『呪い』を吸収するつもりだったのでしょう。

しかし仙人の中の『呪い』が予想以上に強く、逆に封印を解いた『呪い』は吸収されてしまった。」



そこでシギはレイシアのほうを驚いたように見る。

そのシギにうなずき、レイシアは続ける。


「あそこには強くなった仙人の『呪い』の気配が残っていました。

おそらく『呪い』はいま契約者を探しに行っています。

ここから一番近い、人が集まる場所は……」


とレイシアが言ったところで、シギも気づく。


「……ミルドナ……」



レイシアがまた険しい顔に戻り、うなずく。


「そうです。

おそらくすぐにミルドナに契約者が現れます。

何百年も封印されていた『呪い』なら、暴走する可能性は極めて高い。

人が大勢死ぬ。」


それにシギも顔をしかめる。

緊急事態だ。



「その仙人の『呪い』と、それが吸収した『呪い』の能力はわかるんですか?」


シギがそう聞くと、レイシアはうなずく。


「お伽話を聞く限り、仙人の『呪い』の能力はおそらく『万感』でしょう。異常に広い範囲を感じることができる能力。

吸収したほうの能力は……

おそらく『拒絶』です。

近寄る者を、すべて傷つけ遠ざける一種の結界です。」





< 22 / 364 >

この作品をシェア

pagetop