zinma Ⅲ
シギはダグラスから石を受け取り、また大切そうにポケットへしまう。
「私は諦めない。
師匠はきっと人間の世へ戻ることができる。
いや、必ずそれを叶えてみせる。
それまで、私がこの石を預かります。」
そう言って少し目を細めるシギを、ダグラスはまぶしげに見つめる。
意志のこもった彼の金色の切れ長の瞳は、きらきらと光を放っていた。
その瞳はやはり。
やはりその瞳は、カリアにそっくりで………
「……そうか。
君なら…君なら、できるかもしれないな。」
ダグラスはそう言って立ち上がり、窓際へと歩いて行く。
窓の外にはやはりかわいらしい町並みが広がっていて、穏やかに吹く風に、様々な美しい風見鶏がぱたぱたと動いていた。
「………良い気分だ。」
「え?」
突然つぶやくダグラスに、シギが思わず聞き返す。
ダグラスは一度大きく伸びをして、答える。
「んー。
こんなふうに世界を自由に見つめるのは何年ぶりかな。
ずっと軍にこもっていた。
淡々と人の命を切る仕事をこなしていたのが、今では信じられない。」
窓から吹く風が、ダグラスの金色の短髪を吹き抜けていく。
町並みをうれしそうに、まぶしげに目を細めて見つめると、ダグラスはシギのほうを向いた。
「街へ出ないか?」
それまでダグラスを不思議そうに眺めていたシギが、少し驚いたように目を見開く。
「え?いや、でも………」
それにダグラスは声を上げて小さく笑う。
「はは、ただの気まぐれだよ。
散歩、しないか?」
まるで少年のようにそう言うダグラスに、シギはしばらく黙り込んでから薄く微笑む。
「………いいですね。
散歩に行きますか。」
ダグラスもうれしそうに、微笑んだ。