zinma Ⅲ



「はっは!そうか、あんたらは旅人だからしょうがない。

ルーラの神様の話はここらでは小さい子供だって知ってる有名なお伽話なんだよ。」



また魚を一口頬張りながら、シギが小さく相槌を打つ。


「お伽話………。」



店主はそれに大きくうなずき、2人の目の前でしゃがみこむと、下から覗き込むように2人を見上げる。



「ああ、そうだ。

その昔、この西の地方は荒れ果てた大地が広がっていた。

枯れ果てた草と、わずかな水、もちろんまともな生き物なんかいない、わびしい土地だったんだ。

そこで必死で暮らしてたのが俺たちの祖先だ。

でもある年、やっぱり限界がきたんだ。

食べ物も水も尽きて、ご先祖さまたちはみんな死にそうになっていた。」



そこですっかり聴き入っていた2人に店主がまるで内緒話をするかのように顔を近づける。

思わず2人も合わせて身を乗り出す。



「そこでな、現れたんだよ。」

「……何がですか?」

「神様だ。」

「神様……?」



シギがそう聞き返すと、また店主が顔を離して空を指差す。



「たくさんの風をまとって、緑に輝くそれは大きな神様が、空から降りてきたんだ。

神様はルーラと名乗った。

そして死にそうだった俺たちのご先祖さまたちに、一羽の鶏を授けられた。」


「鶏、ですか。」



シギがそう聞くと、店主大袈裟に両手を横に振って答える。




「いやいやただの鶏じゃないんだよ、これが。

金色に輝く鶏でな。

さらにその鶏は、ルーラの神様の分身なんだと。

神様がこの地を去ったあと、なぜかその鶏はある方向を向いたまま動かなかった。

ご先祖さまたちは不思議に思って、その鶏の向く方に行ってみたんだ。

するとどうだ!

そこには美しいオアシスが広がっていた。」



店主は大きく両腕を広げそう声を上げる。


シギは目を丸くして、興味津々に顔を輝かせる。

そのシギの顔にダグラスは小さく微笑んで、また店主の話へ注意をそそぐ。



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