zinma Ⅲ
それにシギはさらに顔をしかめ、言う。
「それは……
もし契約者が現れてしまえばミルドナが……」
それをレイシアが継ぐ。
「そう。そこが危険です。
契約者が『拒絶』によってミルドナを包囲してしまえば、だれもミルドナに近づけなくなる。
むしろ近づくものが皆死んでしまいます。
たとえ私でも、ミルドナに入るにはかなり時間がかかってしまいます。」
そこまで言ってレイシアは走りながら、目を閉じる。
集中するように。
その間もレイシアは枝を避けながら走っている
そしてレイシアが目を開くと、かすかにレイシアの瞳が光る。
それにシギが口を開こうとしたところで、
『リィラ』
と、不思議に世界に響いたようなレイシアの声が発せられる。
それにシギが驚くのと同時、すごい風がレイシアを中心として現れる。
その風がレイシアを浮かせ、レイシアが高く飛ぶ。
それにシギが言葉を失っていると、次の瞬間には、腹に響く気持ちの悪い浮遊感とともにシギも高く浮いていた。
「なっ。」
と思わずシギが声を上げるが、
「動かないでください。
扱いが難しくなります。」
というレイシアの声がするので、止まる。
そして声のほうを見ると、浮き上がったレイシアが右手をこちらに向けている。
どうやらレイシアが風の魔術を駆使して、シギのことも浮き上がらせているらしい。
シギが落ち着いたのをレイシアは確認すると、
「緊急なので、急ぎますよ。」
と言い、膝を曲げ、かがむような体勢になる。
そしてその膝のバネを使い、一気にレイシアが空間を蹴ると、2人は風よりも速く、飛んだ。