zinma Ⅲ



それにシギはさらに顔をしかめ、言う。


「それは……
もし契約者が現れてしまえばミルドナが……」


それをレイシアが継ぐ。


「そう。そこが危険です。
契約者が『拒絶』によってミルドナを包囲してしまえば、だれもミルドナに近づけなくなる。

むしろ近づくものが皆死んでしまいます。

たとえ私でも、ミルドナに入るにはかなり時間がかかってしまいます。」



そこまで言ってレイシアは走りながら、目を閉じる。

集中するように。

その間もレイシアは枝を避けながら走っている


そしてレイシアが目を開くと、かすかにレイシアの瞳が光る。


それにシギが口を開こうとしたところで、





『リィラ』







と、不思議に世界に響いたようなレイシアの声が発せられる。

それにシギが驚くのと同時、すごい風がレイシアを中心として現れる。


その風がレイシアを浮かせ、レイシアが高く飛ぶ。


それにシギが言葉を失っていると、次の瞬間には、腹に響く気持ちの悪い浮遊感とともにシギも高く浮いていた。



「なっ。」


と思わずシギが声を上げるが、


「動かないでください。
扱いが難しくなります。」


というレイシアの声がするので、止まる。



そして声のほうを見ると、浮き上がったレイシアが右手をこちらに向けている。

どうやらレイシアが風の魔術を駆使して、シギのことも浮き上がらせているらしい。



シギが落ち着いたのをレイシアは確認すると、

「緊急なので、急ぎますよ。」

と言い、膝を曲げ、かがむような体勢になる。



そしてその膝のバネを使い、一気にレイシアが空間を蹴ると、2人は風よりも速く、飛んだ。










< 23 / 364 >

この作品をシェア

pagetop