zinma Ⅲ
それにシギが静かな目をダグラスへ向ける。
ダグラスは微笑みながら、うつむいて続ける。
「カリアとファギヌはきっと君に穏やかな幸せを願っていたと思う。
レイシアのこれからを君にたくしつつ、同じようにね。
俺だってそうだよ。
カリアたちの息子には、幸せになってほしい。」
そこでダグラスは顔を上げ、シギを見つめて微笑む。
「はは、だがそういうことなら安心した。
君は充分幸せを掴んでいるようだな。
よかった。本当に………。」
それにしばらく黙り込んでから、シギが口を開こうとしたところで………
『お呼びですか?』
その声にダグラスとシギが弾かれたように部屋を見回す。
「師匠っ?」
「レイシアか……いったい………」
『部屋の中にはいませんよ。
魔術を使っているんです。
さっきから私に連絡を取ろうとしていたじゃありませんか。
用はなんです?』
悠長な様子で聞こえるレイシアの声にシギがダグラスの方を見てため息をつく。
「ほら、言ったでしょう?
師匠にしたらこれくらい楽勝なんです。」
それにダグラスが笑い、
「レイシアは17には見えないな。」
と言うが。
『あー。言っておきますが、あなたたちの声も聞こえるように魔術を使ってますので、そっちの声も丸聞こえですよ。』
そこでレイシアの魔力をたどって魔法陣を描こうとしていたシギが描きかけのところで手を止める。
「え?そんなことどうやって……
いや、それよりいつから……」
それにレイシアの声は小さく笑う。
『あなたが魔法陣をあきらめたころには繋いでいましたよ〜。
あなたたちが仲良しのようで本当によかった。
ルシールさんの話なんか私まで感動し…………』
「師匠!!!」
慌てて叫ぶシギにダグラスは意地の悪そうに眉を上げて、
「あ、ルシールって名前の子なんだな。」
「ダグラ………」
『ええ、とてもかわいらしい女性で……』
「師匠!!
ルシールの話はいいでしょう!」
それにレイシアの声とダグラスは笑い、シギは赤い顔を不満げにしかめたのだった。