zinma Ⅲ

｢それは２人の残したある『呪い』に関する資料です。

昔からルミナ族と『選ばれしヒト』は、ある『呪い』にひどく怯えていました。

あまりにも強大な力を持ち、神でさえ恐れると言われていた『呪い』。

『漆黒』と呼ばれていたその『呪い』は、他の『呪い』とは違い、はっきりとした能力を持っているわけではなかった。

ただ、破壊を撒き散らすのみ。

さらにその『呪い』が特別なのは、その『漆黒』は直系の『呪い』だということです。｣



｢直系？｣

今まで耳にしなかった単語に、シギもダグラスも顔をしかめ、ダグラスがそうつぶやく。



｢『呪い』というのは、お互いに吸収し合ったり、さらにはルミナ族がそうであったように、『呪い』の契約者の交配によって子孫に受け継がれていく可能性もあります。

その場合『呪い』の力は薄れてしまうもので、現代の『呪い』は、数は増えたものの本来の力はかなり薄まっているものが多いんです。

しかし『漆黒』はそういった形跡はなく、生まれたそのままでまだ人の心を渡り歩いている。

それが、直系の『呪い』です。｣



レイシアがすらすらとそう説明し、ダグラスもシギもその膨大な知識を必死で吸収していった。


｢直系の『呪い』だと何か特別な力があったりするものなんですか？｣


シギがそう聞くと、レイシアは真剣な表情でうなずく。



｢直系の場合、古くから数えきれないほどの人間の心を糧としてきたことから、かなりの力を蓄えているんです。

それによって、膨大な負の力によって『呪い』が進化する可能性が高い。

だからこそ『漆黒』には常に新しい能力が生まれ、ルミナ族でさえ『漆黒』の能力を把握できなかった。

だからこそカリアとファギヌは『漆黒』について研究したんです。

少しでもその力を計れるように。｣



それを聞いてダグラスもシギが手にしている紙の束をのぞきこむ。


｢なるほどな。
それでたどり着いたわけか。

この『黒龍』と『黒帝』の伝説に……。｣