zinma Ⅲ
レイシアはうなずく。
「そう。
2人は研究の結果、『漆黒』の『呪い』の言われというのは、その契約者は黒い龍を従えていたということだとわかったんです。
それで私たちは『黒帝』の伝説に目をつけた。」
ダグラスはそれに数回うなずいて、また椅子の上の紙を見つめる。
それにまたレイシアは口を開く。
「私はいつかこの『漆黒』を食べなければならない。
しかしこれにはかなりのリスクがあるんです。
いままでにもたくさんの『選ばれしヒト』が『漆黒』を食べ、しかし耐え切れず消滅している。
これ以上『漆黒』が力を強める前に、一刻も早く『漆黒』を見つける必要はあったのですが……。
これほど早いとなると、まだ私も自信がありませんね…。」
そう言って長いため息をつきながら額を手で押さえてうつむくレイシアを、シギは切れ長の瞳を静かにレイシアへ向ける。
これほど弱気のレイシアを見たことはなかった。
「……先程の『万感』では『漆黒』は映らなかったんですか?」
「……ええ。
どうやら『漆黒』は『隠身』の一部も吸収してしまったようで、姿を隠しています。
数年前に西に現れたのだとしたら、今はどこにいるのか……
検討もつかない。」
『隠身』というのは、レイシアがシギの両親から食べた『呪い』で、『選ばれしヒト』から隠れることのできる『呪い』なのだ。
「そうか………。
しかし西に行けば何か手がかりは見つかるだろう。
それぞれの街に風が止んだ日のことを聞けば、いずれは『漆黒』のいたであろう場所にたどり着くさ。」
ダグラスが顔を上げてそう言うと、レイシアはうなずく。
「はい。
それを信じて今は西に進むしかない。
西に…………。」
そう言ってまた長いため息をつくレイシアに、シギはわずかな違和感を覚える。
なぜか、自信を無くしているだけではないような気がして。