zinma Ⅲ
「…………師匠。
西に行きたくない理由でもあるんですか?」
それにレイシアが驚いたように顔を上げるので、ダグラスも目を細めてレイシアを見る。
「なんだ?言ってみればいい。」
レイシアはそんな2人を交互に見つめてから、にっこりと微笑む。
「………西にはいろいろ問題があるんですよ。
とても面倒な、ね。
まあそれはいいでしょう。」
そう言うやいなや立ち上がって、荷物をあさりはじめる。
それにダグラスはしばらくあきれたように黙り込んで、
「………うちのボスは秘密主義だな。」
とため息混じりに言うので、シギは何度もうなずき、レイシアは声を上げて笑う。
「秘密なわけではありませんよ。
言うほどのことではないので言わないだけです。」
それにダグラスはおどけるように肩をすくめて言う。
「そんなこと言って結局は言わないんじゃないか。
さっきもシギとレイシアはやっぱり謎だらけだって話をしてたんだ。」
それにレイシアが大袈裟に驚いたように顔を上げて、肩越しに2人のほうを振り向く。
「謎、ですか?
ダグラスは会ったばかりだからまだしも、あなたにも言われるとは驚きですね。」
と言ってシギを見つめる。
それにシギは椅子の上の2枚の絵をもとのように折りたたみながら、無表情な顔でレイシアを見つめ返す。
「逆に師匠は私にすべて話してるつもりだったんですか?」
それにダグラスは声を上げて笑い、レイシアも静かに笑う。
「はは、いや、確かにそうかもしれませんね。
よっぽどのことじゃないかぎり聞かれれば答えますよ。」
まだ小さく笑いながら立ち上がるレイシアに、ダグラスが口を開く。
「じゃあさっきの西にある面倒な事実は、よっぽどなことってわけか?」
それにレイシアが動きを止め、じっとダグラスを見つめる。
そしてしばらく黙ったあと、口を開く。
が。
ガン!!!!
突然聞こえた大きな音に、ダグラスとシギが弾かれたように立ち上がる。