zinma Ⅲ
音が鳴ったほうを見ると、強く殴りつけられるようにして部屋のドアが揺れていて。
しかしそれが開かないように、気味の悪い生き物のようにうぞうぞと動きドアを覆っていくドアの周りの土壁。
それにダグラスとシギがレイシアへ視線を戻すと、いつの間にかレイシアはドアのほうへ片手を掲げていて。
だがまったく緊張していないようで、力を抜いた立ち方をして左手を軽く上げているだけだった。
その手首をさらに軽くひねると、ドアを覆おうと動いていた壁が速度を増し、ドアを一気に埋める。
「師匠っ。これは………。」
シギが緊張した様子でそう聞くと、それに答えるようにしてドアの向こうから声が上がる。
「ダグラス・ディガロ!!!
ここにいるのはわかっているんだ!!
大人しくドアを開けろ!!!」
それに合わせるようにして勢いを増すドアを殴る音に、ダグラスがドアの方を見つめて顔をしかめる。
「…………くそっ。
もう軍が追いついたか……。」
そううめくように言って戦闘体制に入ったところで、ダグラスの顔に突然ばさっとコートがかかる。
「ぅわっ。な、……?」
ダグラスがコートを取って振り向くと、レイシアがシギにも同じようにコートを投げてシギがそれを当たり前のように受け取っていて。
「ほら、さっさと行きますよ。」
呆然としているダグラスに気づいて、レイシアがダグラスの荷物を投げてよこしながら言う。
流されてダグラスもコートのそでに手を通すと、もう準備の終わったらしいシギがフードを目深にかぶりながら窓の下をのぞく。
それにダグラスも慌てて準備をすませると、悠々と荷物から何かを取り出しているレイシアに聞く。
「レイシア、出るっていったってどこから出るんだ。
窓から出ようったって下もふさがれてるだろう。」
それにレイシアはダグラスのほうを向かないまま余裕そうにゆっくりと答える。
「なんのために彼らをここまで引き寄せたと思うんです?」