zinma Ⅲ
西の要塞
珍客の扱い
一泊するつもりだったベルーシカを夕方に出てきたおかげで、あたりはもう暗くなっていた。
3人は街道から外れた小さな森の中に入り、野宿の準備をしていた。
集めてきた薪に、シギが素早く魔法陣を描いて火をつける。
少し開けた野原に点したたき火は、辺りを淡い光りでつつむ。
ダグラスは枝で薪をいじりながら、たき火の強さを調整している。
「師匠、次の街までどのくらいですか?」
シギはいくつか魔法陣を描く練習をしながら、聞く。
するとシギの頭上、少し高い木の枝に腰を降ろしているレイシアが答える。
「ここからしばらくは街といった街はないはずです。
しばらくは野宿が続きますよ。」
それにダグラスがレイシアのほうを見上げると、レイシアは片足をぶらつかせ、もう片足は立てた状態で木に座っていて。
なぜかナイフの手入れをしているようだった。
「だが途中に軍の西部支部の要塞がある。
あれより先が、軍の虐殺区域だ。
簡単には通してくれないだろう。
どうするつもりだ?」
それにレイシアはナイフを地面と平行にして視線の高さに合わせて持ったりして、歪みを確認しながら言う。
「………王都の軍の本部にも忍び込めたのに、西部支部を通るのが難しいとは思いません。」
そう言ってまたナイフを磨くレイシアに、ダグラスは呆れるようにため息をついてからまたたき火へと視線を戻す。
「……信じられん17歳だな。」
それに木の上からレイシアの笑い声が聞こえる。
「18ですよ。今日で18です。」
『えぇっ?!』
それにシギとダグラスが声を合わせてレイシアの方を見る。
「は?え?し、師匠は今日が誕生日なんですか?」
「た、誕生日………
いや、そうだよな。誕生日くらいだれにでも……」
2人がわたわたと慌てふためく様子を見て、またレイシアが笑う。
「私だってはじめは人間だったんですから。
誕生日もあれば親もいますよ。」