zinma Ⅲ
それにシギもダグラスも少し真剣な顔になって、レイシアを見る。
「………親のことも覚えているのか?」
ダグラスがそう聞くと、レイシアは下を見ないままでうなずく。
「もちろん。
幼く人間モドキをやっていたころは、いろいろなショックで忘れていましたが、今は覚えていますよ。
といっても両親と過ごしたのは4歳のころまでなので、ほとんど覚えてはいないのですが。」
なんでもないようにそう答えるレイシアに、ダグラスもシギも黙り込む。
「………師匠からそんな話を聞くのは初めてです。」
シギがそう独り言のようにつぶやくと、レイシアはおどけたような声音になって言う。
「そうでしたか?
言ったでしょう。
話さないだけで、聞かれれば答えますよ。」
それに思わずシギは自分の中でレイシアへの興味がわくのを感じた。
「では故郷のことも覚えてると?」
その質問にレイシアが一瞬黙る。
ダグラスとシギがその様子を静かに見つめている。
すると。
ひゅっ!
レイシアが突然、なんの予備動作もなしに手に持っていたナイフを投げた。
たき火の明かりを反射して、きらめく残像を残して恐ろしい速さで飛んだナイフの行方をダグラスとシギが目で追う。
「きゃあっ!」
するとなぜか森の中から女の叫び声が聞こえて。
「え?」
「なんだ?」
シギとダグラスがそう言って立ち上がったところで、すとっとレイシアも木から降りてくる。
レイシアは森の中へ歩きながら、またもう一本のナイフをどこからか取り出し、まるで小石を扱うかのように片手でお手玉をする。
そのレイシアのあとを2人も追う。
すると、数歩森を進んだところで。
「ちょ、ちょっとぉ!
な、何よこれ!!抜けないんだけど!」
甲高く叫ぶ声が聞こえた。