zinma Ⅲ
立ち止まったレイシアの肩越しに、ダグラスとシギが前方を覗きこむ。
するとそこには、少女がへたりこんでいた。
勝ち気そうな猫のように少し釣り上がった赤い瞳に、首のあたりで短く切られた濃い茶色の髪。
まだ15、16ほどに見える少女だ。
身軽そうな革製の鎧をところどころに身につけ、ショートパンツの下に膝丈の革のロングブーツを履いた姿は………
「シーフか?」
ダグラスがそうつぶやくと、少女がダグラスを一瞬きつくにらみつけ、次にレイシアを見る。
「あんた!このナイフ抜きな!
ナイフ投げるってどういうことよ!
当たって死んでたらどうすんの!」
甲高く叫び散らす少女に、ダグラスもシギも顔をしかめる。
そしてよく見ると、へたりこんでいたと思っていた少女は、肩の服が背後の大木にナイフで縫い付けられていた。
それもあと少しで首というところ。
よっぽど恐ろしかったのか、少女はわずかに震えていて、赤い瞳もどこか潤んでいる気がする。
「あなた、ベルーシカからずっと私たちをつけていましたね。
何が目的です?」
すると少女が明らかに動揺した顔をする。
「き、気づいてたの?
じゃあなんで………」
そう言った少女に、レイシアがにっこりと微笑む。
それになぜか少女が少し顔を赤らめた。
しかしそこで。
ひゅっ!!
かっ!!
空気を切った音に続いて、木に何か当たったような音が響く。
するといつの間にかレイシアがお手玉をしていたナイフが、レイシアの手から放れてそこに刺さっていた。
「……ぁ…………。」
少女の右腕を縫い付けるように右肘のあたりの服をつらぬいて木に刺さるナイフを見て、少女が一気に顔を白くさせる。
レイシアは少女の目の前にしゃがみ込み、のぞき込むようにして少女を見つめる。
「今質問しているのは私。
あなたの命を握っているのも私。
今話していいのは私。
わかりました?」
後ろに立つシギとダグラスにはそのレイシアの表情がわからないのだが、シギは心底少女に同情した。