zinma Ⅲ
「ね、ところでさ。
レイシアってほんと強いよね!
どこで鍛えられたの?」
レイシアに追いついたところで、ティラがレイシアの顔を覗き込みながら言う。
レイシアはフードをかぶりなおしながら歩きはじめ、微笑む。
「立ち入った話をあなたにする義理はありませんよ。」
そのままティラを追いぬかして行くレイシアに、ティラは少し頬をふくらませる。
「なによー。
いいさ。シーフのあたしにかかれば過去を引き出すのなんて簡単なんだから。」
シギはそう言うティラを横目で一度見て、レイシアについていく。
「そんなことできるのか?」
ダグラスがため息混じりにそう聞くと、ティラは歩きながらダグラスの横に並ぶ。
「もっちろん。
あたし得意なんだ、そういうの。」
小柄な身体をのけ反らせ、大袈裟にえらぶるティラにダグラスが苦笑いを浮かべる。
「そうかそうか。
まあ、がんばれ。」
それにティラがまた頬をふくらませる。
「馬鹿にしてるの?
いいわよ!見てなさい。」
そう言ってティラは大股でずんずんと歩き、シギに追いつくと、顔を横から覗き込む。
「…………あんたは、そうね…。
名前からして北の民族の出ね。
服の刺繍からすると、クル山脈のあたりの遊牧民の村で育った。
でも髪の色は独特。
そこの本当の子供ではなくて、拾われたようなもんかな。
どう?合ってる?」
赤い瞳を上目遣いに、少しだけ不安げにシギを見上げる。
シギはめずらしく驚いたようにわずかに目を見開く。
「……なに?どっか間違って……」
「お見事。」
不安げにつぶやいたティラの声を、レイシアが遮る。
ティラがレイシアのほうを見ると、レイシアは振り返って微笑む。
「当たりですよ。
ほとんど完璧。」
それにティラの顔が一気に輝く。
「ほんと?!やったあー!!
ね!ね!ダグラスも見てたでしょ?」
ぴょんぴょんと跳ね回るティラに、ダグラスは思わず微笑む。
「ああ、見てた見てた。
すごいじゃないか。」
それにティラは嬉しそうな照れたような顔で笑い、軽い足取りでダグラスの横に戻ってくる。