zinma Ⅲ
少し緊張した様子で見つめていたダグラスとシギが、安心したように肩から力を抜く。
「んもうっ!なんなの?
レイシアの目には何も見えない。
あんたには感情がないの?」
そのティラの一言に、ダグラスとシギがするどく視線を交わす。
「それも当たりです。」
レイシアがさっきよりもにっこりと微笑んで言う。
「え?」
ティラがきょとんとしてレイシアを見る。
「私には感情がない。
そうですよ。
ご明答です。」
それにティラが顔をしかめる。
「なに言ってんの?
それはどういう………」
とそこでティラが突然目を見開く。
ダグラスとシギも思わずティラのほうを向くと、ティラはすっと目を細めてレイシアを見る。
「レイシア…………
あたしあんたに会ったことある?」
それに一番驚いたのはシギのようだった。
金色の切れ長の目を珍しく見開いて、レイシアの後ろ姿を見つめる。
後ろを歩くダグラスとシギには、フードをかぶって、横にいるティラを見つめるレイシアの表情は見えなかった。
「…………さあ。
私は旅人ですから、どこかで会ったことがあるかもしれませんし、会っていないかもしれない。
私の記憶にはありませんよ。」
そう言ってまた前を向いて歩く速さを速めるレイシアに、ティラが焦ったように小走りで追いついて声をかける。
「ちょ、ちょっと!待って!
会ったことがある気がするのよ。
それも最近じゃなくて、昔!
あんた、いつ旅に出たの?」
ティラの話に、ダグラスとシギも興味深げに耳を傾ける。
しかし、
「だから言ったでしょう?
そんなこと、あなたに話す義理はありません。」
レイシアは穏やかな声音でそう言うだけで。
だがティラはさっきのように諦める様子がなかった。
「あたし絶対小さいころあんたにあった気がするの!
すごい昔。
まだあたしが4歳くらいのころよ。
その不思議な色の目も、その髪も見覚えがある。
あんたもしかして………」
そこでレイシアが足を止め、ティラの方を見る。
そのレイシアのフードに、ティラが手をかける。