zinma Ⅲ
「あ!あ!あ!
思い出した!思い出したわよ!!
レイ兄!!
あんたレイ兄だ!!!」
それにレイシアは苦笑いを返し、ダグラスたちはまだ耳を押さえている。
「きゃー!レイ兄久しぶりね!
また会えたんだ!」
そう言ってレイシアの周りをはねまわるティラの手を、レイシアが捕まえる。
「ほら、わかりましたから。
落ち着いてください。」
「そうだ!少しは落ち着け!」
「声を抑えてくださいよ。」
ダグラスとシギがそう野次を飛ばしても、ティラはレイシアに捕まれたままにこにこと微笑んで続ける。
「なんで帰って来なかったの?
確かレイ兄は、あのとき族を追い払ったから軍に勧誘されて軍に着いて行ったって、町のみんなが………」
それにダグラスとシギがまた真剣な目で2人のやり取りを見つめる。
レイシアはしばらく黙り込んでしまって。
「レイ兄?」
ティラが小首を傾げてそう聞く。
そこでレイシアがまたやんわりと笑う。
「ああ、あのときから一度も帰っていませんでしたね。
ずいぶん長い間旅をしていたので、忘れていました。」
そう言って歩きはじめる。
「なにそれー。
でもいいわ。
レイ兄なら話が早いし。」
「話?」
ダグラスがそう後ろからつぶやくと、ティラは肩越しに振り向いて、言う。
「もちろん、サムラのこと。
レイ兄なら領主様のことも、サムラのこともいろいろ知ってるし。
それに………」
「それに、なんだ?」
ダグラスがひょいと眉を上げるが、ティラは前を向き直して首を横に振る。
「なんでもない!
とにかく、今は西の要塞に向かわないと!
レイ兄があんだけ強いんなら、要塞なんてへっちゃらよ!」
そう言ってティラは鼻歌混じりに大股で歩きで前に進む。
そのティラを不思議そうに見つめ、
「わけがわからん。」
ため息混じりにそう言うと、ダグラスも2人に追いつくようにかけていく。
それを見送り、シギは父から受け継いだ金色の瞳を、静かにレイシアへと向けたのだった。