zinma Ⅲ
「忍び込むのはどう見ても不可能でしょう。
ならば、堂々と入ってやればいいんです。」
そう言って微笑んで要塞を見つめるレイシアの横顔を見て、しばらくの間3人が黙り込む。
それに気づいたようにレイシアが3人のほうを見て、眉を上げる。
「ん?どうかしました?」
それに最初に反応したのはティラだった。
「ど、どうかしましたじゃないわよ!
何考えてんの?!
正面から乗り込むなんて……
一瞬で殺されるか牢獄へ直行よ!」
声をひそめながらもレイシアへそう叫ぶ。
するとそれに続いて、
「そ、そうだ!
いくらレイシアでもそれは冗談がすぎる!
ここは西の軍の中心地なんだぞ?」
ダグラスも焦ったように要塞へ目配せしながらささやく。
そして最後にシギが、
「師匠、はっきりと作戦を教えてもらわないと、私たちが不安になるのも仕方がないことです。
どういうつもりなのか、教えてもらえませんか?」
と少し眉を寄せて言う。
レイシアはその3人の反応におどけるように肩をすくめると、また視線を要塞のほうへ向けて答える。
「作戦も何も、私はあの要塞に入れるんですよ。」
当たり前のようにそう言うレイシアに、またティラが怒ったように言う。
「そりゃあレイ兄ならあんな要塞を簡単に突破できるって言えちゃうかもしれないけど、あたしたちはあんたとは違うの!
特にあたしなんか、こう言っちゃなんだけど……弱いんだから!」
しかしレイシアは人差し指を唇に当ててティラを見てから、声をひそめて言う。
「私が言っているのはそういう意味ではないんですよ。
私は、あの要塞に入ることを許可された人間なんです。」
それに最初に反応したのはダグラスだった。
「何?どういう意味だ?
あそこは軍の関係者と特別に許可を得た人間だけしか通れないはずだ。
何かあてがあるってことか?」
しかしレイシアはそれに微笑むだけで、岩影から立ち上がる。
「え、ちょっと!」
ティラがそう声をかけるが、レイシアはそれを聞き流して指をぱちんと鳴らす。