zinma Ⅲ



途端4人のまわりに魔力が満ちる。


シギには、レイシアが魔術によって空気の振動を調節したことがわかった。

そのシギの反応を見て、ダグラスもそれを悟ったようにレイシアを真剣な眼差しで見つめる。


一方、その2人の不自然な反応を見て、ティラだけは理解できていないように、


「え?何?なんなの?」


と、3人をかわるがわる見つめる。



シギとダグラスの反応に満足したようにひとつうなずくと、レイシアが口を開く。


「わかりますね。

こちらの状況をわかるようにしておきました。

しばらくしたら合図を出しますから、追いかけて来てください。

ひとつ言っておきますが、例え私が危険な状況に置かれているようだとしても、合図がなければ決して追いかけないように。

わかりましたか?」



一気にそう言うが、ふたりは同時にうなずき、フードをかぶる。


「は?なんの話よ?

結局レイ兄が行くの?
そんなの無茶に決まって………」



しかしそこでレイシアは何も答えることなく、フードをかぶりながら要塞に向かって歩きはじめてしまう。




それにティラが岩影から身を乗り出して手を伸ばし、


「って、はあっ?!

ちょ、レイに………」


と呼び止めようとするのだが、うしろからダグラスがティラの口を押さえ、岩影に引き込む。



「んんっ?!
んむむも!ももむー!!!」


ティラが何やら叫びながらばたばたと暴れるが、ダグラスは手を放さないまま声をひそめて言う。



「しっ!静かにしないか。

レイシアなら大丈夫だ。
ひとりで要塞に向かった。

俺達はあとからあいつを追いかける。

それまでここで待つんだ。いいな?」



そこでダグラスが力をゆるめてティラを放す。


するとティラはダグラスの手を両手でどけ、ささやくように言う。

「ぷはっ。
わかったわよ、乱暴ね!

でもいいの?

いくらレイ兄でも危険なんじゃ……」


四つん這いでごそごそと移動し、ティラは悠長に歩くレイシアの背中を岩影から覗き込む。


ずっとそうして覗いていたシギが、ささやく。


「師匠なら大丈夫でしょう。

軍の奴らが何人かかって来ようと、師匠には手を出せない。」



そこでレイシアが、要塞の門へとたどり着いたのだった。





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