zinma Ⅲ
「用意周到にもほどがあるわよ!あんたらもしかしてすっごい犯罪者なんじゃないでしょうね?」
ティラがいぶかし気にそう聞くが、そこでまた魔術によってダグラスたちの鼓膜に直接レイシアたちの声が聞こえてきた。
『第一級監獄ですか。懐かしいですねー。』
『おい!黙らないか!』
『ただの独り言ですよ。』
『貴様……っ。いつまでもナメた態度を……』
『はいはい。すみません。そうわめかないでくださいよ。』
『………貴様。本当に第一級監獄のことをわかっているんだろうな。あそこは本物の地獄だ。おかしいくらい広い牢獄に収容されるのは各一人ずつ。孤独と恐怖、拷問に耐えるだけの場所だ。入ったやつはほとんどが狂う。
はは、は。楽しみだな。』
『そんな説明してもらわなくても結構ですよ。一度入って出た場所なんですから。』
『………今回はそうはいかないさ。マーガット中将の指示された貴様への対処は過去ないほど残虐だ。生き残れるものなら、やってみることだな。』
頭に響く石の階段を歩くような足音に、レイシアと誰か男の声。
ダグラスとシギは横目で視線を交わした。
「ちょっとぉ!なんで黙り込んじゃうのよ!」
ティラがそう言うが、ダグラスもシギもそれには反応しない。
『ご親切に。
ところで、今回も最上階に入れてくれるんですか?』
とレイシアが言ったから。
ダグラスとシギは要塞の上の方を見つめた。すると確かに、わずかに備え付けられた窓から漏れる光が、ゆらゆらと上へ登っていくのが見える。おそらくレイシアを拘束している兵士の持つ松明の明かりだろう。
『ああ。最上階は第一級監獄の中でも一番ひどい場所だ。貴様はそこで我々軍に飼われることになった。マーガット中将の指示でな。』
そこで松明の明かりがふっと消え、窓から明かりが消える。それと同時に鼓膜に、鉄格子の開く音と、鎖の引きずられる音が鳴り響く。
「……どうやら、あの最上階の部屋らしいですね。」
「ああ。レイシアのやつ、大丈夫なのか?」
2人は耳に聞こえるレイシアと兵士の会話を聞きながら、眉をひそめた。